遺言書の基礎知識1 遺言書っていったい何なの?
遺言書、って最近よく耳にしませんか?
それもそのはず、平成30年の公正証書遺言(公証役場で作る遺言書のひとつ)の作成件数は110,471件。
その10年前の平成20年の76,436件より34,035件も増加しています。
遺言書は正確にカウントできない種類もあるので、実際はもっと多くの人が「遺言書」というものを遺すようになったと言えます。
この記事を読むと「遺言書っていったい何なの?」ということが、なんとなくイメージできるようになります。
相続や遺言を専門に扱う行政書士が、わかりやすくお伝えしていきます。
遺言書とはどういうもののことを言うの?
「エンディングノート」っていうのを書いたけど、あれとは違うの?
「エンディングノート」も「遺言書」も、ご自身が亡くなった後にまわりの人が困らないための準備という点では似ています。
「エンディングノート」は何をどう書いても「有効・無効」ということはありませんし、逆に言えば基本的に法律的な効果もありません。
「遺言書」には細かいルールが色々とありますが、その分、法律的に有効という安心感があります。
遺言書には3つの種類があります。
- 公正証書 遺言(こうせい・しょうしょ・ゆいごん/いごん)
- 自筆証書 遺言(じひつ-)
- 秘密証書 遺言(ひみつ-)
内容や書き方にも、もちろんさまざまな決まりがあります。
こうした決まりを守って書いたものが、「遺言書」として法的に有効なものになります。
法的に有効な「遺言書」があると、次のようなメリットがあります。
- 「遺産分割協議書」なしで相続手続きができる
- (お子さんがいないご夫婦の場合)折り合いの悪い義理の両親や、日頃つきあいのない義理の兄弟姉妹と相続について話し合う必要がない
- 特定の人に可能な限り多くの遺産を遺したり、最小限の遺産しか遺さない、などができる
- 遺されたご家族の相続手続きの負担を、軽くしてあげることができる
「遺言書」を作ることは、自分が亡くなった後に財産をどう分けるか、について遺志を遺すことです。
「預貯金も大してないし、財産といえば自宅くらい」という方も、ご家族の相続手続きの手間を少なくするメリットがありますので、遺言書について基本的なことを知っておいていただければと思います。
遺言書の効力って?
法的に有効な「遺言書」には書き方などのルールが決まっていると書きましたが、内容も大きくわけて3つあります。
- 身分に関すること:結婚していない相手との子どもの認知や、未成年の子の後見人の指定など
- 財産の処分:相続人以外の人に遺産を遺す、寄付する、信託の設定など
- 相続に関して:遺産の分け方や生前に渡した財産をどう取り扱うかなど
「遺言書」を書く目的で、一番多いのは3番目の「相続に関して」です。
たとえば、以下のようなことについて指定することができます。
- 法律で決まっている分け方(法定相続分)とはちがう割合の財産の分け方
- 生前に援助した多額の学費・結婚や住宅資金を、相続財産の一部として取り扱うかどうか
- 遺言執行者(いごんしっこうしゃ)という、相続手続きを取りしきる人
- 先祖代々のお墓や仏壇を受け継ぐ人
- (遺産ではないが)生命保険金の受取人
よけいなことを書くと無効になっちゃうのかしら…
法的に効力があること以外を書いたらといって、遺言書が無効になってしまうわけではありません。
遺言書には「付言事項(ふげんじこう)」という、お手紙の「追伸」のような項目を入れることができます。
そこには遺言を遺すことにした想いや、ご家族への感謝などのメッセージを書いておくことができます。
遺言書の形式は法律で決まっていますが、付言で「あなたの人生の締めくくりにふさわしい言葉」を遺すことができるのです。
自宅で保管していた遺言書、開封してもいい?
遺言書には 1.公正証書遺言 2.自筆証書遺言 3.秘密証書遺言 と3種類あると書きました。
1番目の公正証書遺言は公証役場で原本が保管されているので、自宅にあった写しを開けてしまっても問題ありません。
問題は、2番目の自筆証書遺言です。
自筆証書遺言は自宅で保管されている方が多いのですが、自宅で保管する場合は、亡くなった後の遺言書の取り扱いについてご家族にしっかり伝えておかなくはなりません。
※2020年7月から、法務局で「自筆証書遺言」を保管してくれるサービスが始まります。
そのサービスについては、また別の記事で詳しくご紹介します。
「自筆証書遺言」は家庭裁判所に申し出て、「検認(けんにん)」という手続きが必要です!
検認を受けずに遺言書を開封するのは違法行為ですし、5万円以下の過料(罰金のようなもの)に処せられることがあります。
(遺言書の検認)
第1004条
一.遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
二.前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
三.封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
引用:民法第1004条
検認を受けずに遺言書を「うっかり開けてしまう」のはトラブルの元でもあります!
開けてしまったからといっても、その遺言書が無効になるわけではありませんが、相続人が他にもいる場合は「書き換えたりしていないか?」「本当に本人が書いたの?」など、あらぬ疑いをかけられないとも限りません。
また開けてしまった場合でも、そのあとに検認の手続きを受けることになります。
検認手続きはご自分で家庭裁判所に申し出ることもできますが、「裁判所なんて面倒がられそう」と思われる方は、専門家に相談するようにお伝えください。
まとめ
遺言書のこと、なんとなくイメージできたでしょうか?
- 遺言書とは、法的に有効な相続についての指示書
- 遺言書で効力がある内容は決まっている
- 自宅から遺言書が出てきた場合は開封厳禁!
今回の記事は、基本中の基本というお話でした。
遺言書について興味はあるけど「これ以上記事を読むのはおっくうだな」「こういうことは専門家に任せるに限る!」という方は、お気軽にお問い合わせください。
また今後、遺言教室も実施する予定ですので、お問い合わせいただけましたら開催日などをお知らせいたします。